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第60話 ホテル②

Author: るるね
last update publish date: 2026-03-27 23:18:20

 一条にそう言われてしまえば、陽菜にはもう引き留める理由もなかった。

「それじゃあ……月乃ちゃん、ゆっくり休んでね」

 月乃にそう声をかけ、部屋を出ようとしたそのとき、背後から一条に呼び止められる。

「藤野」

「はい?」

 振り返る陽菜に、一条は短く言った。

「気をつけて帰れ」

 月乃に手首を掴まれたまま、それでも陽菜と話すときだけは、彼の表情がわずかに和らぎ、かすかな笑みすら浮かぶ。

 陽菜もつられるように微笑んだ。

「一条くんもね」

 ドアが閉まる音がした瞬間、一条は掴まれていた手を思いきり振り払った。

「っ……」

 そのまま手首を忌々しげに握り、軽く捻る。触れられていた感触がまだ残っている気がして、不快感に顔をしかめた。

「いたっ……一条くん、力強すぎるよ……。女の子にも、いつもそんなに乱暴なの?」

 月乃はまるで気にもしていない様子で、甘えた声を漏らす。

 先ほど、一条が陽菜を先に帰らせたことが、彼女に妙な自信を与えたのかもしれない。

 すぐさま再び一条に絡みつこうとする。

 しかし一条はそれを無視し、くるりと背を向けると部屋の中を見回した。そして冷蔵庫からミネラルウォー
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